セラ購入記念企画

SERA PICTURE

セラで学ぶヒューマン・インターフェイス

 先日7年越しの想いが叶ってトヨタのセラを手に入れることができました。あんまりうれしいので、こんなページを作ってみました。別段セラである必要はまったくないのですが(笑)。ともあれ、このページでヒューマン・インターフェイスの基本用語をひとつでも知っていただければ幸いです。

  • セラとは?
  •  セラとはトヨタ自動車が日本で始めて発売したガルウィング・ドアの自動車です。このドアによりサイドからトップにかけて切れ目のない連続的なガラス・キャビンを実現し、全天候型オープン・カーとでも言うべき解放感を実現しています。僕は高校の時にこの車のデビューを知って以来ずっと憧れていたのですが、そのスタイルが奇抜すぎたためかあまり売れ行きは良くなく、平成7年にモデルチェンジされることもなく生産終了となりました。

     セラについての更なる詳しい情報は余語さんのホームページのセラ次世代研究会へどうぞ。

  • セラに見るヒューマン・インターフェイス
  •  このページで勉強するヒューマン・インターフェイスの概念はアフォーダンス、対応付け、そしてトレードオフです。必ずしも専門用語というわけではないものも含まれていますが、どれもインターフェイスを使いやすくデザインするためには欠かせない概念なので説明します。

  • アフォーダンス(AFFORDANCE)
  •  「アフォーダンス」とはもともと人間の知覚研究で使われていた言葉ですが、D.A.ノーマンという人がはじめてインターフェイスのデザインにこれを活かせば良いデザインができるのではないか、と提案しました。

     人間は目にした物が一体何に使えるかを瞬時に理解することができます。例えば椅子は座ることができます。これは椅子が座れる(体重を支えられる)というアフォーダンスを持っているからです。「椅子が座ることをアフォードする」などと言ったりします。椅子が座れるのは知識として知っているから、わかるのは当たり前だと言われるかも知れません。では、あなたが山道を歩いていたとしましょう。長時間歩きどおしでかなり疲れてきました。そこでどこか腰掛けられるところがないかと辺りを見回します。もちろん椅子なんてありません。こういう場合に人間はほとんど無意識にアフォーダンスを利用して岩や切り株を利用することができるのです。岩や切り株はもともと人間が座るようにデザインされた道具ではありませんが、人間はアフォーダンスによってその使い道を見いだすことができるのです。

     下の写真はセラのエアコンの吹き出し口です。

    AC-CLOSEAC-OPEN

     今までの車にはない独創的な形状をしています。操作方法も今までのものとはまったく異なります。しかし上側の窪みがつけられているので、なんとなくその辺りを押せばいいのだな、というのがわかるのです。このように、まったく未知の道具でもアフォーダンスをうまく活かしたデザインをすれば、注意書きやラベルを貼っておかなくても使い方を理解してもらえるのです。

     これはセラのガルウイング・ドアを内側から見たところです。  波打ったようなモールドが施されています。これは下の写真のようにレバーを引くと同時に肘で押すことをアフォードしたくてデザインされたようです。

     しかし、どうも何人かを助手席に乗せて観察した限りではあまりうまくいっていないようです。片手でレバーを引き、もう片方で押して開ける人が圧倒的に多いです。  実際、どのような形や色や大きさや固さや重さが、人間にどのような動作をアフォードするか、ということについては最先端の世界でもしっかりとしたデータが揃っているわけではなく、理論化が期待されています。

  • 対応付け(MAPPING)
  •  対応付けとは、あるものとあるものの関連付けの仕方のことです。インターフェイスを理解しやすいものにするには、操作対象とボタン、操作と結果等の対応付けを直観的にわかりやすいものにしておく必要があります。当たり前で簡単なことのようですが、これが思いのほか考慮されていません。例えば大きな部屋の蛍光灯のスイッチを思い浮かべて下さい。スイッチ・パネルを見て、どのスイッチを押せば天井のどの蛍光灯が点灯するか、すぐに理解することができるでしょうか?ほんのちょっと配置を工夫すれば、もっと直感的に理解できるスイッチ・パネルがデザインできるんじゃないでしょうか?

     下の写真はセラの運転席のコンソールの中の半ドア警告灯です。

     ヘンだとは思いませんか?だってセラのドアはこんな風に開くんですよ。

    SERA Door Open

     これではセラしか乗ったことのない人はなんのランプであるか理解できないかも知れません(いや、どっか探せば一人くらいは...。教習所で習うって?ごもっとも)。どうしてトヨタはセラの半ドア警告ランプのアイコンのデザインをもっとセラのドアの形に則したものにしなかったのでしょうか?それは次の項目で解説します。

  • トレードオフ(TRADE-OFF)
  •  トレードオフも別段インターフェイスの専門用語ではないのでご存知の方も多いと思いますが、重要な概念なので取り上げました。これはいわゆる「あちらを立てればこちらが立たず」の関係のことです。インターフェイスのデザインはまさにこれの連続なのです。良いデザインの為の原則やガイドラインはたくさんあります。上記の「アフォーダンスをうまく利用する」とか「良い対応付けを提供する」といったものです。しかしこれらは往々にして互いに矛盾するすることが多いのです。それが先の半ドア警告ランプの例です。もうおわかりでしょうが、半ドア警告ランプの形は自動車業界の中での一貫性(CONSISTENCY)を保持しなければならない、という制約もあるのです。一貫性とは同系統の機能のボタンのデザインや操作方法が類似していることです。ユーザはある機能で覚えた知識を他でも利用でき、合理的です。例えばMacintoshのソフトウェアは厳格なガイドラインによって一貫性が保持されているので、あるソフトウェアの使い方の大部分は他のソフトウェアでも通用するのです。半ドア警告ランプの例も、自動車業界で半ドア警告ランプの形状を統一することで、車を乗り換えても同じルック&フィール(見た目と操作感)で運転できるように努めているのです。そしてこのことによって、セラの半ドア警告ランプの形と実際のドアの形状との対応付けが犠牲になっているのです。

     下の写真はセラのメーター・パネルです。

     なんとメーターの数字が直立ではなくメーターに沿って放射状に配置されています。おかげで数字の中心と目盛りの位置がピッタリ合い、針が差す目盛りと実際のスピードや回転数といった数値との対応付けが取りやすくなっています。その代わりに数字が傾いたりして読み取りにくくなる、というトレードオフが存在します。

  • 最後に
  •  もうひとつメーカーにとって大変重要なトレードオフがあります。コストとのトレードオフです。使いやすいデザインの為にボタンの色を変えたり配置を変更したりすると製造コストがあがります。市場の製品でボタンが黒一色だったり同じ形でズラーっと並んでいてどれがどれだかわからない、というものが多いのは、そうするのがもっともコストの節約になるのです。また試作の時点で一般のユーザに見せてテストをすることは有効であると言われていますが、これも人件費や時間の制約であまり行われていないのが現状です。つまりメーカーはこの厳しい景気の中で、ユーザの使い勝手と製造コストというトレードオフの後者を取っているということです。ひどいと思いませんか?でもこれは我々消費者にも責任があるのです。我々は普通ものを買う時、インターフェイスの出気不出来を気にして選ぶでしょうか?多くの人はそうはしないと思います。見た目がカッコいいだとか、値段が安いとか、あるいは宣伝しているタレントで選ぶかも知れません。ユーザが機種選定の際にインターフェイスを見ないとしたら、どうしてそこに高いコストをかけられるでしょう。製品が使いにくいと文句をいう前に、我々消費者が意識改革をする必要があるのです。もちろん勝手からメーカーに苦情の電話を入れても改善の助けにはなりますが、そもそもそういう製品は買わない、ということがメーカーにとって一番の尻叩きです。「でも買う前から使い勝手なんてわかんないよ」と言われるかも知れません。もっともです。また慣れる前と慣れた後ですら使い勝手というものは変わってきますし。でもパンフレットを見たり、店頭でリモコンを手に持ってみるだけでもわかることはあります。手に持ってみて持ちやすいか?なんでもいいから何か操作をする場面を思い描いてみて、それがスムーズにできそうか想像してみるだけでもたくさんの事に気づくはずです。他にも、僕が大学での研究活動や昔からの電気屋巡りの趣味から得た経験や知識から、そういう選択の一助になればと、こうした一連のホームページを作成しています。是非参考にしていただけたらと思います。世の中無用の苦労が多すぎます。道具はもっと人間に優しいものにできるはずです。さぁ、皆で使い易い製品重視の世の中にして、僕のような人間の雇用を拡大させましょう(笑)。


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