ヒューマン・インターフェイス用語解説

 このページでは、ヒューマン・インターフェイス、特に良いインターフェイスをデザインする為の原則に関連した用語を解説します。

Table of Contents

  • アフォーダンス(Affordance)
  • 一貫性(Consistency)
  • フェイル・セーフ(Fail-Safe)
  • フィードバック(Feedback)
  • フールプルーフ(Foolproof)
  • 対応付け(Mapping)
  • メタファー(Metaphor)
  • メンタル・モデル(Mental Model)
  • 制約(restriction)
  • 可視性(Visibility)
  • 多義性
  • 事前の計算(Pre-Computation)
  • ダイレクト・マニピュレーション(Direct Manipuration)

    参考文献


  • アフォーダンス(Affordance)
  •  アフォーダンスとは、もともと知覚用語であるが、Normanがインターフェイスの用語として定着させた。物体の持つ属性(形、色、材質、etc.)が、物体自身をどう取り扱ったら良いかについてのメッセージをユーザに対して発している、とする考えである。動詞はサ変活用(?)で「アフォードする」などという使い方をする。

     インターフェイスのデザインにアフォーダンスを利用すると、ユーザはその扱い方を知らずとも、その時々物体の方が扱い方を教えてくれる。つまりユーザがその物体について知っていなくてはならない事の量を減らすことが出来る。

     インターフェースの世界では、純粋なアフォーダンスだけではなく、後天的な学習によるものも含め、広く「アフォーダンス」という言葉を適用する傾向がある。また実際、その区別は困難であると思われる。

    【例】
     写真は中京大学情報科学部棟のトイレのドアである。

    押す事をアフォードしている例 引く事をアフォードしている例

     我々はドアの扱いについて明示的に教わった事はない(と思う)にも関らず、無意識にドアを扱うことが出来る。そうそう、アフォーダンスの受信(?)は無意識かつ瞬時に行われるものだと考えられる。

  • 一貫性(Consistency)
  •  操作と動作との対応付けに一貫性のあるインターフェイスは、ユーザが覚えなくてはならないことを最低限にしてくれる。同じ目的を達成する為の方法は、互いに同一であるか、できる限り似ていることが望ましい。ユーザは過去に同様な事をした事があれば、その時と同様な操作を試そうとする。異なる製品でも、同じ目的であれば同様な操作で実現できる事が望ましいが、とりあえず同じ製品の同じ操作でも場合によって動作が異なるようなインターフェイスは最低である。どうしてもそうすることがやむを得ない場合は、その時々でシチュエーション(モードと呼んだりする)が異なる事が見てわかるようにデザインする事が必要である。

    【例1】
     写真は最近増えてきたレバー式のカランである。

     これがまた、上げると水が出るものと下げると水が出るものがあり、混乱を招いている。インターフェイスに明るい某教授のお宅では、台所と洗面所でこの作法が異なるらしい。クレイジーである。

     このように、どちらがより自然かについて決定が難しい場合について、Normanは「どっちかを世界的に標準として決めちゃうしかなんじゃないの?」と述べている。このカランも標準化が望まれる例だろう(どうも最近は下げると水が出る方式に統一されつつあるような気がするが)。

    【例2】
     写真は典型的なテレビの電源スイッチである。

     ひとつのボタンであるにも関らず、ある時は電源を入れるスイッチであり、ある時は電源を切るスイッチであり、と正反対の動作をする。一貫性はない。しかし、このスイッチはよくデザインされており、ボタン自身が現在のモードを表す役割をも担っている。すなわち、ボタンが出っ張っている時は「電源入ボタンとして機能する」事を意味し、引っ込んでいれば「電源切ボタンとして機能する」事を表す。ユーザはひと目見てこのボタンを次に押した時の動作がわかるので、混乱はおきない。またこのような一回の操作毎に出っ張ったり引っ込んだりするボタンは、なんらかの機能のON/OFFを切り替えるのに使われる、というのも一種の標準化である。

     ちなみにこの例では、ユーザはテレビの電源が今どういう状態にあるかについて、画面からもフィードバックを受けていると考えられる。

  • フェイル・セーフ(Fail-Safe)

     ユーザの誤った行動によるトラブルを未然に防ぐ為の制約を特にフェイル・セーフと呼ぶ。

    【例】
     カセット・テープやビデオ・テープの爪。あの爪を折っておくと、誤って上から録音/画しようとしても機械が作動しないようにできている。

  • フィードバック(Feedback)

     インターフェイスの世界でフィードバックとは、ユーザの行動に対する道具や機器からの返答の事を差す。キーボードをタイプすると画面に文字が出るのも、電話機のプッシュボタンを押すとピポパと音が鳴るのもフィードバックである。もっと高度な例では、画面にメッセージが表示されたり、音声で聞こえてくる場合もある。

     ユーザはフィードバックによって自分の意図が道具や機器に伝わったかどうか確認ができる。ユーザが安心して、また間違いを起こさずに道具を使えるようにするには、適切なフィードバックを返すインターフェイスをデザインすると良い。

     ユーザは必ずしもデザイナーが意図したところからのみフィードバックを受け取っているわけではない。いつもの操作に付随して起こる現象であれば、それが正常を示すフィードバックだというメンタル・モデルを生成する。例えば完璧な消音システムにより、イグニッション・キーを回してもエンジンの音が聞こえない車が開発されたらどうだろう?その時には別のエンジンのスタートを示すフィードバックを考えなければならない。デザイナーは、ユーザが持っているメンタル・モデルを意識し、それに対し一貫性を持ったデザインを心掛けることが望ましい。

  • フールプルーフ(Foolproof)

     「Fool」も文字からもわかる通り、「どんなバカでも使える様に為されたデザイン」に対して使われる言葉である。大きめの英和辞書なら載っているような割と一般的な用語である。

     ちなみに古田のデスクには、先日アメリカに旅行した際に買ってきた写真の様な額が飾られている。

     古田はこれを座右の銘にしてインターフェイス研究に望みたいと考えている。もちろん、「バカというのはあまりにもバカだから、フールプルーフなんてものはできるワケがない!」と諦めるという意味ではない。「どんなに注意深くデザインされたインターフェイスでも、必ず誰かがミスをおかす。だから、デザイナーはその1歩も2歩も先を読んで対策を講じておかなければならない」、そうキャプテンはおっしゃっているのである。ところでキャプテンって誰だ?

  • 対応付け(Mapping)
  •  ここで言う対応付けの「対応」とは、主に動作と操作の対応を指す。動作も操作も複数の選択肢がある時、どの操作がどの動作に対応しているかを見極める必要がある。良いインターフェイスとは、この対応付けが自然なものになっているものを言う。自然な対応付けとは、右のスイッチを押せば右の照明が点き、スライダーを上にあげれば音量が上がる、といったごく当たり前の対応の事である。こんな簡単な事もできていないインターフェイスが世の中には多い。

    【例】
     写真は先日古田がアメリカに旅行に行った際に宿泊したホテルの照明スイッチである。

     このスイッチの右に洗面台があり、左がトイレ/バスのドアになっていたのですが、左のスイッチで洗面台の照明が、右のスイッチではトイレ/バスの照明を換気扇が動作するという、とんでもない設計になっていた。

  • メタファー(Metaphor)
  •  メタファーとは比喩の事で、インターフェイスの世界では対象となる道具/機器の使い方と、以前に使って知っている道具/機器の使い方との間の一種の対応付けの事である。新しいインターフェイスが、従来のインターフェイスの概念や使い方をうまくメタファーとしてデザインに取り入れると、ユーザは過去の経験や知識を活かす事で、その新しいインターフェイスについて学習しなければならない事を最低限にする事ができる。

     メタファーはコンピュータのインターフェイスでアイコン(主に事物を象ったシンボルマーク)として使われる事が多い。

    【例】
     最も代表的なもののひとつは、Macintoshのゴミ箱アイコンであろう。不要になったファイルやフォルダ(これらもまたメタファーである)を捨てたいと思ったら、マウスでゴミ箱に移動すればいい。これは現実世界の知識をうまく流用しているので、ユーザにとってとても自然でわかりやすい。Macintoshは10年も前からこのメタファーを使っている。95年にようやく採用したのとは歴史の重みが違う。おっと、ついエヴァンジェリズム魂がウズいてしまった。

     ちなみに、Macintoshでは、ゴミ箱にゴミ(不要なファイル)が入っていると、ゴミ箱アイコンが膨らんだ形になる。最近Apple社(Macintoshのメーカー)の偉い人になったNormanが、「ゴミを入れて膨らむゴミ箱があるかい」といったからかどうかは定かではないが、次期バージョンではこの仕様は止めになるらしい。

    ゴミ箱が空の時中身がある時
    現バージョン
    次期バージョン

  • メンタル・モデル(Mental Model)
  •  メンタル・モデルとは、実際の機器の振る舞いとの整合性に関らず、ユーザが心的に持っている機器の動作に関するモデルである。ユーザが機器の振る舞いを元にして作り上げたモデルなので、見掛けはもっともに感じられ、普段はその理解でうまくいく(何故なら普段の振る舞いから作り上げられたものだから!)。しかし、このメンタル・モデルと実際の機器の振る舞いとの間に差異(=誤解)があると、ある時、たいていそれは些細なトラブルが起こった時だが、そのトラブルを大きくする役割を果たす。

     デザイナーは、ユーザが機器の実際の振る舞い(システム・イメージ)に出来る限り近いメンタル・モデルを持てるようにデザインする事が望まれる。

    【例】

     以下の写真は古田の車の燃料計である。

    目盛りは等間隔にふられているので、針が真ん中に来たらタンクの半分が空になったという事だと理解していたが、どうもそうではない。後半になると急速に針が進むようになる。メンタル・モデル1は最初に古田が抱いたモデル、メンタル・モデル2は修正後のものである。

    メンタル・モデル1メンタル・モデル2

    メンタル・モデル2であればとりあえず針の振る舞いを説明しているようであるが、これもまた「普段」の振る舞いから作られたものに過ぎず、また針が奇想天外な振る舞いを見せた時には修正をしなければならない。

  • 制約(restriction)
  •  インターフェイスのデザインには、制約をうまく取り入れる事が大切である。と書くと不思議に聞こえるかもしれない。ユーザにとって制約ばかりで自由度のないインターフェイスなんて使い易いものだとは思えない。しかしながら、どんな操作も出来得る道具を前にしても、ユーザは一体何をしたらいいのか迷ってしまうであろう。メニューのないレストランい入った時の事を想像してみて欲しい。そのお店ではどんな食事ができるのかわからないと、ウェイトレスに可能性のあるメニューをひとつひとつ尋ねていかなければならない。しかしメニューという制約によって、最初から可能な選択肢だけに絞られる。

     インターフェイスの世界でも同様に、デザイナーの側で、「この道具は、こういう事とこういう事が可能なので、その中から選んで下さい」という風に選択肢を提示してやるのが制約である。コンピュータという道具にはこれがなく、何ができるのかわからないので、目的無しに使おうとすると難しく見えるのかも知れない。

    【例】
     写真は公衆電話のコイン投入口である。

     御存じの通り、公衆電話で使えるコインは\10玉と\100玉だけである。このデザインには誤って\500玉を入れてしまわないような制約がある。物理的に大きさが合わず入れることが出来ないようになっているのである。しかし\1玉、\5玉、\50玉は入ってしまうかも知れない(試したことないからわからないが)。

  • 可視性(Visibility)
  •  インターフェーイスの世界では、「その道具に対して何ができるかがユーザに視える事が大切である」というのも大切な教えのひとつである。

     我々はドアの操作は向こうに開けるか、こちらに開けるか、横に滑って開けるか、上に持ち上げて開けるか、などいくつかの候補がある事を知っている。しかしそれだけでは、実際に目の前のドアはどの方法で開けられるかわからない(ノブも何もついていないただの板状のドアを想像して欲しい)。しかしノブのアフォーダンスなどで押せる事や引ける事が「視える」事によって、行動の選択肢を特定する事ができる。ユーザは対象の動作の選択肢と操作の選択肢の両方があって、初めてその間の中から目的を達成できる対応付けを見出し、行動を起こせるのである。何かを試すには、まず何ができるかが視えない事には始まらないのである。

     ドアに対してできそうな事(赤い丸の部分)が「視える」事で、無限の選択肢を絞りこむ事ができる(制約)。その中でも有効な選択肢だけを、アフォーダンスなどを利用して強化すれば、更にわかりやすいインターフェイスにできる。

    【例】
     写真は古田のワークステーションが、ユーザからの指示を待って待機している状態の画面である。

     これに対して考えられる操作の選択肢は、ひとつのコマンドの長さが1〜255文字の可変で、アルファベットの他に数字と一部の記号とが使えるとすると、その種類はおよそ.....誰か計算して!....とまぁ、無限に近い。更にマウスでクリックするのが有効かも知れないし、電源を切るという選択肢もある。ユーザが予めどんなコマンドが有効であるかを知っていなければならない。もちろん、これは悪い例である。

     対して、Macintoshに代表されるメニュー・インターフェイスは、システム側から選択肢を限定して提示してくれるので、ユーザは自分の目的にあっていると思われるものを選択すれば良い。

  • 多義性
  • 工事中

  • 事前の計算(Pre-Computation)
  • 工事中

  • ダイレクト・マニュピュレーション(Direct Manipuration)
  • 工事中


    参考文献

    Norman D.A., 『誰のためのデザイン?』, 新曜社, 1990(日本語訳出版年)


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