| 『Emotional Design』概要 | [楽しい、ドキドキする、ハマるインターフェイス] |

Addictiveなインターフェイスを議論するのにタイムリーなことに、『誰のためのデザイン?』[Amazon.co.jp]のD.A.Norman氏が、人間の感情面から製品に対する魅力を考察した新刊『Emotional Design: Why We Love (Or Hate) Everyday Things』[Amazon.co.jp]を刊行なさいました。日本語訳も近日中に出る予定ですが、若干遅れているようですので、ここで概要について簡単に説明してみたいと思います。
ユーザビリティの入門書、バイブルとして慣れ親しまれてきた『誰のためのデザイン?』ですが、「確かに書いてある通りに設計すれば使いやすくはなるが、製品として魅力的なものにならないのではないか?」というコメントが多く寄せられたそうです。確かにユーザビリティだけを最優先したデザインでは人は魅力を感じない(ことが多い)。では、人は製品の魅力をどう判断しているのか?という観点で、人の感情という視点から、魅力を感じる認知的メカニズムを考察したのが本書である、ということのようです。
この本の中で、Normanは人が感じる魅力を3種類に分類しています(カッコ内の訳は、来日公演時の暫定的なもので、日本語訳出版時には変更になる可能性があります)。
- Visceral Level(本能レベル)
- Behavioral Level(行動レベル)
- Reflective Level(内省レベル)
Visceralは「内臓の」の意味で直感的、反射的に“お腹にクる”外観デザインによる魅力。
製品が使いやすかったり、楽しい演出がなされていたりして、それを利用する過程そのものに対して感じる魅力。
“パリ旅行の”お土産や、“ゾーリンゲンの”ナイフ、“南アルプスの”ミネラルウォーターなど、製品そのものというより、それに付随するイメージに対して感じる魅力。
もちろんある製品がこのうちのどれかに分類される、という話ではなく、それぞれの製品にこれらの要素がそれぞれの配分で効いているんだ、ということです。どのレベルの魅力もバランスよく持っている場合もあり得ます(iPodなどを例に出してます)。
これらは従来、それぞれデザイナ、ユーザビリティ、マーケティングの各部門が独立して、かつバジェットや仕様決定権を奪い合いながら製品開発が進められてきたものです。(どれかにズバ抜けた天才がいる場合を除き)大多数の現場ではこれら三態の魅力がバランスよく盛り込まれた製品を目指すのが現実的であり、三者が互いの立場や主義主張を理解しあって協調的に開発を進めることが望ましい、というのが本書の論点であるように思います。
Norman自身もこれを完成した理論だとは思っておらず、あくまでとっかかりであるという風に捉えている感じのようです。単純にこの3レベルで済まないかも知れないですし、他の分類方法の方が重要かも知れません。ただ、15年ほど前に『誰のためのデザイン?』で認知心理学や認知科学の知見をデザインの現場に適用可能な形に“翻訳”してくれたように、本書でも(これも認知科学の研究トピックである)感情研究を、現場に身近なレベルに引き込んでくれたのかな、という感想を持ちました。良くも悪くも今後様々な議論を呼び、影響を及ぼしていく一冊だと思います。
本コーナーの「楽しい、ワクワクする、ハマるインターフェイス」カテゴリでも、この分類に囚われる気はありませんが、分析考察のとっかりとしては参考になるのではないかなと思い、概略を紹介してみました。
具体的な事例も盛りだくさんで面白い本だと思うので、日本語版刊行の際には是非ご一読をお薦めします(一応、孫弟子として宣伝してみたり(^^;))。
執筆者 furuta : September 23, 2004 01:04 PM | トラックバック